事件に関わっているから遅くなると昨晩,新一に平次からのメールが入った。 いつも事件を追うとお互い午前様になるのは当たり前な事で。 この日もいつもの事だと思っていた。しかしいつまでたってもその後、平次からの連絡がなかった。 いつも過保護だと何度言っても、平次は自分の状況を連絡してきたし、新一にもそれを約束させた。 だから呆れながらも新一も連絡は必ずしていた。 一晩連絡がないということは何か事件に巻き込まれて連絡出来ない可能性が高い。 新一は上着を羽織ると財布をポケットに入れ、馴染みの刑事に連絡をしようと携帯を手にしたと同時に 着信を知らせるメロディが鳴る。 ほっと一瞬顔を緩ませるがそれは出さず不機嫌な声をだす。 「朝帰りの連絡とはいい度胸してんな」 「まぁ、そう怒らないで。工藤新一くん」 聞き慣れなれない声。確かに平次からの着信番号だったはずだ。新一の顔が強張る。 「誰だ」 「君に依頼をしたいんだよ」 「依頼?」 「そう。ある秘密を、事件を解いて欲しいんだ」 「断ると言うわけにはいかないようだな。服部は無事か」 「さすが話が早いね。今のところは無事だよ。ただこれからの君の行動で どうなるかはわからないが」 眼を瞑りすうっと小さく息を吸い込む。 「何をすればいい」 冷静な声で電話をかけてきた人物に尋ねる。 「君の携帯に暗号を送るよ。まずはそれを解いてくれ。もしも警察に 知らせる様なマネをしたら…わかってるな」 「警察には知らせるつもりはない」 「暗号が解けたらまずメールをいれるように。では…楽しみにしているよ」 男は含み笑いをして携帯を切った。 「あの、バカ」 どこに連れて行かれたんだ。怪我は負わされて無いだろうか。新一はぎゅっと手を握った。 しかしメールの着信音に思考を中断される。添付ファィルを開くと奇妙な記号がしるされていた。 「なんだ、この記号は…」 数年前、経営難から廃止に追い込まれたアミューズメントパーク。 その後買い手もつかずにそのまま忘れられた存在となりつつあった。 新一はそのゲートの前でバイクを止めた。バイクから降りるとゲートに近付くが、 やはり大きな鎖と錠で入れないようになっている。最近誰かが入った形跡もないようだ。 その場にバイクを置いたまま新一は柵に沿って歩き始める。少しすると従業員が 使用していたと思われる扉が表れた。錠がはずされている。かろうじてぶら下がっている形だけの錠をはずすと園内に入り込んだ。 広大な敷地には誰もおらず、動かない乗り物が長い影を落としていた。そろそろ日が沈む。 新一が解いた暗号をメールで返信するとこの場所の地図を送られた。 暗号は新一がこれから依頼される謎を解くのがふさわしい人物か、まずはお試しといったところなのだろう。 園内の中央部分に進むと、急に目の前が明るくなり、その眩しさに新一は腕で顔を隠す。 「ようこそ。工藤新一くん。あの暗号を短時間で解いてしまうとはさすがだね」 ゆっくりと眼を開けると中央広場にある舞台に大きなスクリーンが設置され、一人の人物が映し出されていた。 「まぁそうでなくては、私が依頼する謎を解くに値しない人物になってしまう」 新一は何も言わず、そのモニターの人物を睨みつけている。帽子を深くかぶり、サングラスをかけているため 顔がはっきりとしない。スクリーンの人物の背後は白い壁が移っており、人物の場所などを確定できるものなどは 何も映ってはいなかった。 年代は40代前半といったところだろう。仕立てのいいブランド物のスーツを着込んでいる。園内にカメラが仕掛けられているのか、 まるでその場所から新一を見ているかのようにモスクリーンの中の人物は新一に話しかけてくる。 「服部は無事なんだろうな」 男がにやっと笑った後、モニターに平次の姿が映しだされる。縛られたまま、ぐったりと横たわっている。 「服部っ!」 届かないとわかっていながら新一は平次の名を叫んだ。モニターはすぐに切り替わり、また男を写し出す。 「彼は元気がありすぎてね、ちょっと大人しくしてもらっているよ。工藤君が依頼を受けてくれたら君も服部君も 無事帰してあげよう。タイムリミットは明日午前10時」 「もし、解けなければ…」 「明日このパークは解体される。至る所に爆薬が仕掛けられていて、タイムリミットとともに爆破されるようになっている」 新一は拳を握った。 「この敷地のどこかに、宝石が隠されている。工藤くんにはそれを見つけていただきたい。これから君に送る暗号にその隠し場所が書かれているらしいのだが私にはどうしても解けなくてね。優秀な君に解いてもらいたいのだよ。さぁ、もう無駄話はやめよう。ゲーム開始だ。頼んだよ工藤新一くん」 そして画面は消え、園内の照明が一斉に点灯し、明るくなった。誰も乗っていない乗り物が不気味に動き出す。 新一は一度目を瞑り深呼吸するとその場から走り出した。 園内の地図を手に入れ、男から携帯に送られて来た暗号を解いて行く。 「何故こんな場所に宝石なんて…」 本当に此所にあるのだろうか。あるとしてもそう簡単には見つからないはず。人の出入りが激しいこんな場所で 今まで見つからなかったのが不思議だ。 このアミューズメントパークはかなり古く、何度も改装され敷地を少しずつ増やしていった。新一が地図を見ていると携帯が鳴った。 「新一、頼まれていた物が見つかったぞ」 「サンキュー博士。そしたらこっちに送ってくれないかな。それと経営者の事わかったか?」 「ああ、その資料も一緒に送ろう。しかし何でそんな昔の資料が必要なんじゃ」 「ちょっと、事件でね。また調べて欲しいことがあったら連絡する」 「気をつけてな」 すぐに新一は送られてきた資料に目を通す。当時の経営者はこの地に小さな遊園地を作る。バブルともに敷地は広くなり、乗り物の数も増えていった。新一はこの場所に来るのは初めてだったが、テレビで何度かCMを見たことはあった。 大きな観覧車が売りで、その後ジェットコースターを設置。3年前まで営業していたが、経営不振で廃止に追い込まれた。 |
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